——今回ご協力頂いたのは、京都医療センターにて様々な取り組みを積極的に導入されている副院長 塚原徹也 先生、そして外来化学療法室の田中雅子 副看護師長、緩和ケア病棟の田村彰子 看護師長の皆様です。日々医療に従事する中での心情と共に、soniphy ご活用の工夫を教えてくださいました。
——今回ご協力頂いたのは、京都医療センターにて様々な取り組みを積極的に導入されている副院長 塚原徹也 先生、そして外来化学療法室の田中雅子 副看護師長、緩和ケア病棟の田村彰子 看護師長の皆様です。日々医療に従事する中での心情と共に、soniphy ご活用の工夫を教えてくださいました。
田中副看護師長(以下田中):「短ければ15分、長ければ6時間続く化学療法中をどのように過ごすかは、治療の苦痛と大きく関係します。ですので、本を読んだり、テレビを見たり等、患者様も試行錯誤をされています。
音を聴いて思い出等を振り返る時間にする試みは、今までにない提案でしたので面白いと思い、患者様にもお勧めしています。 実際にsoniphy をシートに座り聴いてみたところ、とても良かったです。専用のヘッドホンも購入しました。」
田中:「治療前であっても、『また今日も治療か』と不安や苦痛を予期して嘔吐してしまう方もいらっしゃいます。同じ場所に来ると苦痛が思い起こされることもあります。
そういうこともあり、現在は治療の待ち時間の工夫の一つとして、 採血台で過ごして頂いています。採血台の後に無指向性のスピーカーを置き、後ろから包み込まれるような効果で、さりげなく聴いて頂いています。当初待合室にも置いてみたのですが、全体的な雰囲気感よりも、患者様個々にさりげなく寄り添い、その人の心境で色々に聴こえるような感じの方がいいと思いました。このことによって、少しでも治療前の不安などを軽減して頂ければと思っております。」
——田中看護師長ならではの視点の奥深さから、患者様の不安を軽減したいと日頃から強く思われていることが伝わってきます。そして、緩和ケア病棟の田村看護師長もまた、患者様の状態を支えるために音を使って頂いておりました。
田村看護師長(以下田村):「緩和ケア病棟には、気持ちの辛さが身体の苦痛を強めてしまっている方々がいらっしゃいます。その方々のリラックス効果を期待して、ベッドサイドに置き、自然の音や童謡を流しました。とてもデリケートで、音楽はいらないという方も多い環境ですが、この音が不快だという話はご家族も含めて全くありません。『自然な形で、自然な音がある』ということが魅力だと思います。」
田村:「ミスト浴という、寝たままミストに入り入浴が出来る設備 があるのですが、森林浴や露天風呂のような感じで気持ちが良いのではないかと思い自然の音を流しました。今後も引き続き、設置場所の工夫や音量調整を行い、患者様に届けていこうと思います。」
——患者様がどのような心境でいられるか、少しでも心地よく過ごしてもらおうという、お二人の想いを強く感じます。更に、患者様とのコミュニケーションの手助けとしても、音を活用されていることを教えてくださいました。
田中:「薬剤指導や、看護師が話をさせていただく面談室というのがあるのですが、そこでは患者様やご家族にお待ち頂くことも多いため、soniphyを流すようにしています。先生が来るまでの緊張した空気を柔らかくしてくれています。
実際の面談時には、話の合間に音が鳴るので、無理することなく会話をすることが出来ます。面談室での会話は非常に重要かつ繊細ですので、大きな支えになっています。」
田中:「実は、患者様が少なくなる夕方ごろ、『私が最後ですか?』 と申し訳なさそうにされる方が多いのです。自分だけ残されていくので。私たちも患様のそわそわする気持ちをどうしてあげればいいかなと考えていました。
音を流してみると、言葉で言わなくとも、『ここに一緒に居てもらって大丈夫です』っていう気持ちが伝えられます。居心地は不安にも大きく影響しますので、とても重要です。」
——更に、その音の力はスタッフの皆様にも届いているようです。
田村:「緩和ケア病棟では、スタッフステーションで記録したりなどする際に活用しています。やはりケアをする側もリラックスします。自然な音なので、疲れているときでも心地よいです。」
田中:「患者様に気を払いながら音を流していましたが、スタッフ自ら、自分たちのために soniphy を流すようになっていました。主に人情系の音楽が入っている Air Art Human です。始業時に流れると、『さあこれからだ、 さあ患者さんを迎えるぞ』という気分になり、元気が出ます。今では毎日流しています。」
——様々な目的で訪れる患者様だけでなく、スタッフの皆様にも気持ちの変化をもたらしている soniphy。音が、その空間にいる皆様に形を変えながら届いている事実を知ることができました。
環境向上、と一言でいえど、大きな空間一つを変えるだけではなく、スピーカーを持ち運ぶことにより患者様ひとりひとりの空間を個別化することも工夫の余地として考えられます。激務に加えてこれらを行うことは容易なことではありませんが、京都医療センターでは、スタッフの皆様が各々考えをもち、それぞれの立場から日々 接する患者様のための工夫をされていました。そこには、京都ならではのおもてなしの精神や、人あたりのしなやかさ、そして強さがありました。音という新たな要素が加わった今、今後も新しい医療を力強く切り開かれていくことが期待されます。
緩和ケア病棟
田村彰子 看護師長
塚原徹也 副院長
外来化学療法室
田中雅子 副看護師長